着物の布と布が重なり合う様を「拝み」という。言わずもがな、多くの和服に取り入れられている仕様だが洋服を作る上ではタブーとされてきた。昨シーズン同様、あえてそのタブーを取り入れたジャケットをはじめ、手作業での加工にこだわったディテールを採用するなど、これまでになく挑戦的なコレクションを展開する。
「拝み」の仕様を採用したダウンジャケットは、全体的にゆったりとした着用感に仕上げた。スポーティーなダウンジャケットと着物という対照的な要素を組み合わせることで、新たな一面を引き出す。
柔らかなシープボアに施したのは、ランダムな黒のプリント。スプレーを吹きかけたような質感は、ホワイト地の素材に斬新なテクスチャーを作り出す。また、ボタンを閉めることで、前後に立体感が生まれるユニークなシルエットも特徴だ。
ホーンのライダースジャケットは、80年代アメリカのスタイルにインスパイアされたビッグシルエットで表現した。レザーの独特な風合いは、縫製後にスプレーで加工し、手でこすることで作られる。手作業で仕上げるジャケットは、一着、一着異なる表情を持つ。
Text: Runa Anzai(kontakt)
Photo: Shinichiro Shiraishi