Furniture & Material

The talk|June 27 2018

余白を残す、北欧家具の美学。

英国製のフォームグレーのファブリックで包まれたHans J Wegnerのソファー『AP18』。


 Hans J WegnerやNils Jonssonなど、北欧を代表する家具デザイナーが手掛けたソファーやキャビネット。08bookのミニマルな空間にすっと馴染み、控えめながらも存在感を放っている。40年、50年と経った今でも古めかしさや、衰えを感じさせない、その佇まい。長く愛されてきた普遍的なデザインの魅力について、中目黒のヴィンテージ家具店「HIKE」のショップマネージャー、中島圭さんは“余白を残す、美学”にあると考えている。

貴重なローズウッド材が用いられたNils Jonssonのキャビネット。


「手狭な住宅が多い北欧では、生活への配慮が家具のデザインに生かされています。天板のサイズが調整できるカフェテーブルは、まさに象徴的なディテールのひとつです。そんな機能面に加え、選ぶ色や柄、フォルムまで、圧迫感を与えない気遣いが張り巡らされているからこそ、どれも華美な造形がない。結果として生まれた“洗練されたミニマルさ”が、時代を越えて多くの人の心を掴んでいるんだと思います」とデザインを捉える。

08Bookのために、HIKEに特注してもらった大理石のテーブルやウッドテーブルにも、北欧家具のデザインバランスが応用されている。


「過度な存在感を放っていないからこそ、組み合わせるものとの調和を生み、空間を引き立てる脇役としても利用価値のあるものになっている。例えば、08bookのような白い空間なら、その場に映えるアクセントに。山小屋のような部屋なら、温もりのある木材の表情をさらに引き立てる、という具合に…。
そんな使い手の状況によって印象を変える“余白のあるデザイン”が、北欧家具の魅力であり、楽しみ方です。
どの家具を選ぶか以上に、その余白をどのように埋めていくかにそれぞれの美意識が色濃く表れます」。
温かみのある北欧家具に対して、現代アーティストの陶器やガラス工芸、イタリア製のスタンドライトなど、やや無機質なもので飾られたHIKEの店内にも中島さんのこだわりがある。
「すべてを同じトーンでまとめて調和を図るのもひとつの手法ですが、あえて、ギャップのあるものを合わせることで、今の時代感や、モダンさを表現しています。決して、正解はありませんので、自分らしいアレンジを楽しんでもらえたら…。懐が深いのが、北欧家具なので!」

(左)ファクトリーの適正にあったデザインに定評のあるHans J Wegnerのもの作りを象徴する、
AP stoilen社製のハイバックチェア『AP16』。



(DATA)
HIKE
東京都目黒区東山1-10-11
03-5768-7180
http://www.hike-shop.com

Text: Keiichiro Miyata