Magnificent Natural

The story|March 27 2019

大自然の迫力。

ボストン近代美術館に所蔵されるなど、アメリカを代表する木工作家のひとりとして、アート界でも評価が高まっている、ジョージ・ピーターソン。彼の物作りを10年以上、見守り続けてきた富山のインテリアショップ『CARGO』のオーナー・野村晃二朗さんに、その魅力を伺った。

「見渡す限り緑に囲まれた米・ノースカロライナ州のブレバードの大自然の真ん中に、ジョージの物作りの拠点があります。そんな環境を存分に生かしたダイナミックな作風が、彼の持ち味です。用いる素材に対して、常にその姿や木目を生かすことを重視するため、奇をてらったような嫌らしさがなく、純粋さを帯びています。」

「彼の作品の魅力を短く言い表すのは難しい。ただ、採れた木の模様や、雨風によって描かれた傷や割れ目といった自然の温かさを味わいとしてしっかりと残し、それでいて繊細なニュアンスを感じられる。そして、実用性がありながらも、見ているだけで惚れ惚れする存在感がある。すべて本人が手作業で仕上げるため、年間で生み出せる数も限られていますが、その分、丁寧に向き合ったものばかり」

「そんな彼の作品へのアプローチや向き合い方は制作当初から変わりません。目まぐるしく揺れ動く時代の中で、彼のやってきたことが徐々に世に受け入れられてきたことで、今の人気があります。自然が持つダイナミックさが作品を包んでいるため、男性ファンが多い印象がありますが、個人的には男女差なく楽しめるムードを纏った作品が多いのかなと。特に、滑らかに研磨されたウッドボウルは、大きさも、価格も、手に取りやすいのではないでしょうか。日本で見られる場所は限られていますが、実物に触れることで、心を揺さぶられる感覚を味わえます」

「今、08bookに並ぶ2種類のスツールも同様です。ひとつは、大被削材を回転させながら刃物台を操作し、大木を切削するターニングやチェーンソーで木材を象ってから細かなところはノミで仕上げていく、豪快さと繊細さを兼ね備えた人工物とは思えない佇まい。もう一方は、ミルクペイントを施した後に焼くことで独特な表情が浮かび上がっています。どちらも、テクニカルな工程を経て出来上がったものですが、その過程よりも、観た人の印象で作品の佇まいやムードを自由に感じ取ってほしい。これからも08bookを通じて、その魅力を伝えていきたいです」


George Peterson
独学で木工と彫刻を学び、1992年よりアメリカ・ノースカロライナの工房、“circle factory”で活動をスタート。実用性とアート性を兼ね備えた彼の作品は米国のクラフト専門誌「アメリカン クラフト マガジン」や、ほかメディアからも注目を集めている。

Text: Keiichiro Miyata