Feel the Clothes

The talk|December 4 2018

Feel the Clothes

「08sircusの服との向き合い方」

シーズン毎のスタイル提案だけでなく、洋服を纏う人物像や生活空間まで、ブランドの世界観を表現してきた08sircusのルックブック。そこで手腕を振うのが、2018年から08sircus menのヴィジュアル製作を担当する、スタイリスト・宇佐美陽平さん。デザイナーが生み出したコレクションやアイテムと、どのように向き合い、彼なりのスパイスを加えているか、その真意を伺った。

「スタイリングを担当する以前から、08sircusのクオリティの高さは感じていました。洋服に触れたときに手に残る生地の感触や加工技術の巧みさは、素直に楽しいと思える。アイテムを通じて感動を味わえるのは、まさにファッションの醍醐味です。すべては、長年ブランドを続けてきた経験値と蓄積があるからでしょう。小手先のデザインに逃げず、生地選び、ファブリックの繊細さ、色使いをとことん突詰めてきた結果が、はっきりと洋服のムードとなって浮かび上がっていると思うんです。たとえ、抽象的なテーマだとしても、それを表現する手段が、素材なのか、またパターンや加工なのか、アプローチの引き出しが多いから、毎回新鮮な驚きがある。そこに、08sircusの魅力が集約されていると思います」

「なかなかファッションを言葉で表すのは難しいですが、あえて言うなら、トラッドをベースにした男のワードローブに、空気感と繊細さ、ナードな雰囲気を取り入れているのが、08sircusらしさ。ブランドが長年かけて築いてきたイメージや哲学、さらに歴史まで、僕らは背負う責任があると思うんです。だからこそ、始めにブランドの姿をできるだけ正確かつ瞬時に咀嚼(そしゃく)して、自分に何が出来るかを考えなくてはならない。表現が過剰演出では本来の姿を殺してしまうし、逆に物足りなくては服の魅力を引き出せない。その適度なバランスを常に模索しています。08sircusにおいては、ブランドが拠点を置くアトリエ兼ショップ『08book』の洗練されたムードも、そのヒントになりました」

「初めて携わったAutumun and winter 18では、森下さんと僕の気分が一致して、クリーンでレトロな70sを意識した人物像を作りました。中でも象徴的なのが、チェックコートに赤いパンツを合わせたルックです。クラシックやトラッドがベースにある08sircusの軸は崩さずに、ちょっとした小物やヘアスタイルでナードなムードを加えています」

「これから立ち上がるSpring and Summer 19は、色のトーンが落ちついたストロングな印象なのですが、こういったムードの服の場合、硬い素材を使うのが一般的だと思うんです。ただ、そこをあえて、生地選びと加工で柔らかく仕上げていて、ところどころ化繊や合繊を使い軽やかさもある。そんな服のエッジに目がいくように、生地の陰影やドレープのある表情を際立たせて、写真の寄り引きで緩急をつけました。どのシーズンも、あまり演出は加えずに、シンプルに切り取っています。実際にスタイリングする上でも、“シンプル”が、08sircusのような繊細でクオリティの高い服を生かすポイントになるはずです」


宇佐美陽平さん
うさみ・ようへい/1976年、東京生まれ。Autumun and winter 18より、08sircusn menのルックブックを担当。ほかに、メンズファッション誌のスタイリングや、ショップのディレクションも手掛ける。

Text: Keiichiro Miyata
Photo: Tomoaki Shimoyama (Mr.Usami)
Shunya Arai (model)